OTA-C バットマン ザ•ダーク•ナイトを観て 忍者ブログ
ヒゲG-ZのOTA-C (オタック)  since 2009  Otherworldly Art - Club
[221]  [220]  [228]  [216]  [219]  [214]  [213]  [217]  [218]  [212]  [211
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

この映画は、新バットマンを主人公にした「ダークナイト三部作」の2作目、闇の騎士バットマンとジョーカーの戦いの話しであり、「ヒーローとは何か」、「正義とは何か」を問うクリストファー•ノーラン監督の映画です。『ザ•ダークナイト•ライズ』を観る前に再度鑑賞しました。

ゴッサム•シティーに不正や腐敗を取り締まる「光の騎士」としてハービー•デント地方検事が登場する。その対比として、あくまで「影」に徹して、犯罪を憎み平和を祈るブルース•ウェイン(バットマン)は、「暗黒の騎士」として存在している。

ブルースの執事アルフレッドがバットマンについて語る。「ブルース様とデント様は悪党の気まぐれに付き合うより大事な役割があるとお考えなのでしょう。たとえ、みんなから憎まれようとも…。それがバットマンの払う代償です。彼はヒーローではありません。それを超えたものです」と…。

しかし、一人戦いを続ける悩めるバットマンがアルフレッドに言う。「人が死んでいく。僕はどうすればいい?」「耐えるのです。耐えれば憎まれますが、それがバットマンなのです。バットマンは、はみ出し者。だからこそ、思い切った決断を下せるのです。正しいご決断を!」「今日、バットマンにできない事が分かった。彼は耐えられない…」と、純粋であるがゆえに、そして「自己の正義のルール」の中で孤独に戦うゆえに、一人の人間としてバットマン自身が弱音を吐く。ヒーローであるゆえに、ヒーローを超えた者であるがゆえに、「孤独」とは切れない存在である事を示している。

(下のつづきを押して下さい)

金や理屈で動かない絶対的な要素を持つ悪の化身であるジョーカーと、バットマンが取調室で対峙して、ジョーカーが彼が守っている一般市民について語っている。
「連中(一般市民)にとってお前はイカれてる。俺と同じ。今はお前が必要だが、いらなくなったら?嫌われて…のけ者さ。連中は、モラルだの、倫理(規範)だと言っているが、悪い冗談さ。ちょっと困れば、直ぐ捨てちまったろ?!善良なのは、世の中がまともな時だけさ。見てろよ。いざ追い込まれてみろ…いわゆるその文明人ってやつだって、殺し合いをはじめる。俺はバケ者じゃない…ひと足先を行っているのさ」と、一般市民、我々の心理を付き、それを利用して人々を恐怖におとしめる恐ろしさを表現している。

そして、単なる暴力以上の効果を出して、バットマンを追いつめていく。「お前にはルールがあるが、ただの気休めだ。真実を知るにはルールを破らなければ…」と言わしめ、実際にジョーカーをひき殺せる場面で、バットマンはそれをしなかった。「自己の正義のルール」に則って…。

その後の展開に関して、『009 RE:CYBORG』の監督神山健治氏は語った。
「闇から生まれたヒーローは、常に「正義とは何か」について苦悩していて、そこへ人間の悪意を結晶化したような存在としてジョーカーが登場する。『ダークナイト』の終盤で、一般市民が乗った客船と、犯罪者たちが詰め込まれた護送船とのやり取りなんかは、まさにその部分の問いかけですよね。つまるところ、人間の本質とはどうしようもない悪なんかじゃないか、というね。だけど、そこで皮肉やニヒリズムに傾かないのがノーラン監督のいいところですよね。最終的に、バットマンの行なった正義が人々に伝わらなかったとしても、それをダイレクトに感じた一握りの人間はその思いを受け取ることができる。ただし、一般大衆に広く伝わるものではものではない、とも描いている。(アニメスタイル002より)」
まさにその通りで、劇中で、2隻の船に爆弾が仕掛けられ、互いの船の起爆装置を互いに持っていて、どちらが先に起爆装置を押すのかと、ジョーカー(ノーラン監督)が仕掛ける。一般大衆は民主主義に則り、多数決で起爆装置を押す(人を殺す)ことになり、一方、囚人たちが乗る船の一人が起爆装置を海に放る。結局、どちらも起爆装置を押す(相手の船の人達を殺す)ことができない。一見、単純なしかけであり、映画表現において幼稚な表現に見えるが、反対に言えば、より分かりやすく観る観客に「一般大衆の心理」を表している。「自分ならどうするのか?」と…。
そしてバットマンが、ジョーカーに言う。「何を証明したかった!?結局、誰の心も奥底は醜いと…!?(醜いのは)お前だけだ!」と…。キリスト教的性悪説に対して、性善説的にバットマンは、一般人と囚人両方の「善」を信じていた。そうすると、根底にある一般大衆への信頼がヒーローの条件かもしれない。
さらに続けてバットマンが言う。「たった今、ゴッサムの市民はお前に示した。彼らは良心を信じる善意の人々だと…!」それに答えてジョーカーは「それは希望が壊れるまでの話しだ。みんなに見てほしいね。本当のハービー•デントを…正体を現して復習しているというヒーローぶりを知らしめたいね。…お前には切り札があるか?俺のはハービーだ」と言い、結局彼の武器は、銀行を襲うことでもなく、街を破壊することでもなく、爆弾で船を吹き飛ばす事でもなく、ハービー•デント彼自身だとバットマンに、そして我々観客に言い放つ!「ゴッサムの希望『光の騎士』に俺たち悪のレベルまで降りてきてもらった。簡単だったぞ。激しい怒りってやつは、そう重力のようなものだ。人は一押しで落ちていく。

ハービー•デント「光の騎士」は恋人を失い、悪の道に引き込まれていく。
彼にジョーカーは言う。「俺はただ本能で動くだけ。マフィアは計画を練る。警察も計画を練る。そうとも奴らは陰謀家だ!陰謀家は世界をコントロールする気だ。俺は企んだりしない。支配しようとすることが如何にバカげている事か…。この世界はコントロールできやしない」と。

さらに続けて、「ひとつ教えてやろう。人間てのは物事が計画どうりだと誰もパニックを起こさない…どんな恐ろしい計画でも…。例えば、俺が、明日マスコミにギャングのメンバーが撃たれるとか、兵士の乗ったトラックが爆発されると言ってもパニックは起こらない。それは予想の範囲だからだ。ところが、たった一人の「どうでもいい市長」が死んだら…みんな大慌て!まず、ちょっとした騒ぎ(小さな無秩序)を起こし、体制の秩序をヒックリ返しゃ…後は混乱の渦巻く混沌の世界!俺は混沌の使者(配達人)。混沌の本質が分かるか…?それは恐怖だ!」と、一般大衆の心理を説いて、彼自身が自らを「恐怖」そのものであることを語っている。

彼が何もコントロールすることなく、彼がきっかけを作るだけの人の心理を利用するだけの頭脳犯だと分かる。映画上では派手な爆発や銃撃戦はあるが、それは彼の本質でないことがよくわかる。そして「ツーフェイス」となったハビー•デントが、ゴードン刑事の家族を人質に取り、復讐鬼へと落ちていく。ジョーカーの思いのままに…。バットマンに倒されるが、ゴードンは言う「ジョーカーの勝ちだ。ハービーが悪と戦った努力は水の泡だ。ハービーの殺人が知られたら街を良くするチャンスはハービーの名声とともに消える。希望は消えた。ジョーカーは光を闇に変え、市民は絶望する。」そこで、死んだ5名の犯人がバットマン自身である事にするという提案をする。「俺はヒーローではない」と…。「ゴッサムのためなら何でもする」と言う。「手を抜くな。俺を糾弾し、犬を放つんだ。そうしなければならない。真実がいつも最善だとは限らない。もっと大切なものがある。ヒーローへの信頼がときには必要だ」と、自己犠牲による平和を選択する。唯一の理解者ゴードンは、最後に語る。「彼はゴッサムに必要なヒーローだ。だが、今は「時」が違う。だから追われて、そして耐える。彼はヒーローじゃない。静かな守護者、我々を見守る監視者ダークナイト(暗黒の騎士)」だと…。

クリストファー•ノーラン監督は、バットマンを単純なヒーローにしなかった。脳天気に明るく、一般大衆から喝采を浴びるヒーローにしなかった。よりリアルに、バットマンを一人の人間として扱い、悩み、そして苦しみ、孤独に生き、耐え忍ぶ人間像をもとにヒーロー、そしてヒーローを超える存在として描いてみせた。彼が描くヒーローは、一人の人間として、自己のルールに従い、悪を憎み恐れられ、ときには誤解されても、平和への意志を持った存在としてある。そこにノーラン監督の真の「正義とは何か」という答えもある。

私は、ノーラン監督の思想に共鳴し、萬画家石ノ森章太郎先生のヒーロー像と共通なものを見ています。石ノ森先生も、孤独で、悩みを持ち、ときには誤解されるヒーロー像を描いた。そこにスーパースターではなく、一人の人間がいた。だから私たちは、石ノ森先生のヒーローに共鳴し、長く彼の作品を愛して止むことはない。やっと、やっとアメリカ系の脳天気なヒーローではなく、ハリウッドの新しく、真のヒーローに出会えた気がします。

拍手[3回]

PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
プロフィール
HN:
OTA-C (オタック)
男性
元は、ある教育機関のオタクのためのクラブでしたが、廃止になったため個人のブログとして書き込んでいます。
アニメ、マンガ、フィギュア、コスプレなど、一定のビジュアル技術・メディア・コンテンツについて考察するブログです。
カレンダー
04 2025/05 06
S M T W T F S
1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
カウンター
忍者ブログ [PR]